誤読と曲解の読書日記

読書の感想を書く日記です。あと、文具についても時々。

2016-01-01から1年間の記事一覧

2016年読書日記ブログ 記事アクセス数ランキング/12月と2016年のまとめ

2016年ももう終わり こんにちは。『誤読と曲解の読書日記』管理人の”のび”です。1年が過ぎるのは早いですね。さて、この『誤読と曲解の読書日記』は、以前からはてなダイアリーで更新を続けていましたが、今年の9月なかばに、こちらのはてなブログに引越しし…

悪も滅び、善も滅んだ/W・シェイクスピア(福田恆存訳)『ハムレット』新潮文庫

「善に対する悪の勝利」なのか ウィリアム・シェイクスピアの『ハムレット』は、善に対する悪の勝利を描いた悲劇とひとまず位置付けられている。デンマーク王のクローディアスは、兄の先王ハムレットを殺して、その地位を簒奪した人物。のみならず、先王の妃…

緩慢で漸進的で迂回的であっても/渡辺将人『アメリカ政治の壁−利益と理念の狭間で』岩波新書

暗澹とした気分にさせられる一冊 2016年のアメリカ大統領選挙の本選挙では、事前の大半の予想を覆し、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利した。政治経験のないトランプ氏は、既存の政治勢力から見ればアウトサイダーであり、彼の大統領としての手腕に期待と…

小説家の評伝がもっとあってもいい/2016年11月のまとめ

小説家の評伝がもっとあってもいい 岩波新書から出た『夏目漱石』(十川信介著)を買いました。まだ途中までしか読んでいませんが、夏目漱石の生涯をたどりながら、漱石の書いた小説の背景などを探る評伝です。このような新書形式の小説家の評伝、もっとあっ…

善い行いが光を与える/W・シェイクスピア(福田恆存訳)『ヴェニスの商人』新潮文庫

今も色あせない『ヴェニスの商人』 ウィリアム・シェイクスピアの『ヴェニスの商人』を、最近読み直した。たしかに面白い。先のストーリーが気になってページを早くめくりたくなる、というタイプの面白さがある。それに加え、善なるものや寛容を求める姿勢と…

今年のノーベル文学賞/2016年10月のまとめ

ボブ・ディランに2016年のノーベル文学賞 先日、今年のノーベル文学賞が発表になりました。ご存知のとおり、ボブ・ディランが受賞しました。ボブ・ディランさんにノーベル文学賞 音楽家・作詞家:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASJBF5VGVJ…

一生抱えていかざるを得ない痛み/ジェイムズ・ディッキー(酒本雅之訳)『救い出される』新潮文庫(村上柴田翻訳堂)

一生抱えていかざるを得ない痛み ジェイムズ・ディッキーの『救い出される』は、男たちが川下りの途中で陵辱と暴力にさらされ、そこから逃れる物語だ。悪から逃れて生き延びるため、男たちは悪を犯さざるを得なくなる。生き残り、逃げのびて、救い出されるた…

不完全で儚い存在/河合祥一郎『シェイクスピア 人生劇場の達人』中公新書

戯曲を読むのが苦手 わたし自身、戯曲を読むのは苦手だ。なぜ苦手なのか、それを説明すると長くなりそうなので割愛するが、「地の文」でさまざまな説明や描写のある小説と比べて「ト書き」の情報しかない戯曲では、想像力がより必要とされるから、みたいなと…

伊東マンショ肖像画/遠藤周作『王の挽歌』(上下巻)新潮文庫

伊東マンショの肖像画 昨日の日曜日、宮崎県立美術館で公開されている、伊東マンショの肖像画を見に行った。今日は宮崎県立美術館で公開されている、伊東マンショの肖像画を見てきた。四百数十年の時を経てもなお、色褪せない肖像画を見ていると、伊東マンシ…

あこがれの書見台、「今月のまとめ」はじめました/9月のまとめ

「今月のまとめ」はじめました この『誤読と曲解の読書日記』は、今月から毎月末に「今月のまとめ」を更新します。内容はその月に更新した記事のまとめ、というそのままの内容ですが。。。ただ、今月更新した記事をまとめただけでは物足りないので、なにか読…

馬鹿のバイブル、爆笑の爆弾/フィリップ・ロス(中野好夫・常盤新平訳)『素晴らしいアメリカ野球』新潮文庫(村上柴田翻訳堂)

ナンセンスと悪ふざけの濁流にただ身を任せる 『素晴らしいアメリカ野球』は、アメリカの作家フィリップ・ロスが1973年に発表した長編小説。この物語は、本拠地を失くした架空の放浪球団ルパート・マンディーズを中心に、やはり架空の大リーグである愛国リー…

まるで悪夢を見るような虚構/S・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』河出文庫

読書を通じて悪い夢を見る スティーブン・ミルハウザー著 岸本佐知子訳『エドウィン・マルハウス あるアメリカ作家の生と死』河出文庫。本書はアメリカの作家スティーブン・ミルハウザーの長編小説第1作目。本書は「子供によって書かれた子供の伝記」(訳者…

中上健次やジャズを知らなくても/中上健次『路上のジャズ』中公文庫

ひりつくような青春時代の背景に流れていたジャズ 中上健次『路上のジャズ』中公文庫は、中上健次のジャズに関するエッセイを中心に、詩や短編小説を一冊にまとめたもの。また、巻末には、インタビューを収める。中上健次の青春時代が、いかにジャズに傾倒し…

夜の酒場のネオンサインのようなチープな輝き/チャールズ・ブコウスキー(柴田元幸訳)『パルプ』ちくま文庫

夜の酒場のネオンサインのようなチープな輝き チャールズ・ブコウスキー(柴田元幸訳)『パルプ』ちくま文庫。一般に、探偵の出てくるハードボイルド小説では、はじめに深刻な事件が起こり、探偵が解決に向けてあちこち動き回り、いくつかの紆余曲折を経なが…

消え去る気配のない雲と降り止まない様子の雨/トマス・ハーディ(河野一郎訳)『呪われた腕 ハーディ傑作選』新潮文庫

消え去る気配のない雲と降り止まない様子の雨 トマス・ハーディ(河野一郎訳)『呪われた腕 ハーディ傑作選』新潮文庫(村上柴田翻訳堂)。本書は19世紀イギリスの詩人で小説家トマス・ハーディの短編から8編を収めたもの。この短編集の多くが、運命のすれ違…

失われてしまったもの、欲しくても手に入らなかったもの/ウィリアム・サローヤン(柴田元幸訳)『僕の名はアラム』新潮文庫

読んでいて「いいなあ」と感じることのできる短編集 ウィリアム・サローヤン(柴田元幸訳)『僕の名はアラム』新潮文庫(村上柴田翻訳堂)に収められている14の短編はすべて、9歳のアラムという名の少年が主人公。子どもの目から見ると、世界には悪など存在…

かつて抱いたヒリヒリとした焦燥感/カーソン・マッカラーズ(村上春樹訳)『結婚式のメンバー』新潮文庫

気の触れた夏のできごと カーソン・マッカラーズ(村上春樹訳)『結婚式のメンバー』新潮文庫(村上柴田翻訳堂)。『結婚式のメンバー』は、フランキー・アダムスという名の12歳の少女の「緑色をした気の触れた夏のできごと」を描いた長編小説。フランキーは…

ブクログをはじめてみました

ブクログをはじめました 今更ながらブクログ( http://booklog.jp )をはじめてみました。ブクログというのは「web本棚サービス」。 つまり、読んだ本や積読本、あるいはこれから読みたいなという本を、web上に登録することができるサービス、ということです…

多弁な酔っ払いの、熱を帯びた言葉たち/チャールズ・ブコウスキー(中川五郎訳)『死をポケットに入れて』河出文庫

発熱する言葉 ひさびさにブコウスキーの『死をポケットに入れて』を手に取った。チャールズ・ブコウスキー著(中川五郎訳)『死をポケットに入れて』河出文庫。50年間愛用したタイプライターからMacのパソコンに変えて書いた日記調のエッセイ。生と死、詩と…

ゾラのみせる別の一面/エミール・ゾラ『水車小屋攻撃 他七篇』岩波文庫

軽々とした自由なゾラの筆致を味わう短篇集 エミール・ゾラ作 朝比奈弘治訳 『水車小屋攻撃 他七篇』岩波文庫。本書はエミール・ゾラの中篇、短篇、掌編小説を8作品収めたものである。エミール・ゾラというと、『居酒屋』や『ナナ』といった重厚で長大な小説…

知恵と教訓を読みなおし、できる限りの手を差し伸べよう/磯田道史『天災から日本史を読み直す』中公新書

磯田道史著『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災』中公新書。日本は昔から、地震・津波・噴火・台風・土砂災害といった自然災害=《天災》に数多く見舞われてきた。いにしえの人々は、さまざまな《天災》に遭い、被災しながらも、後世の人々に警鐘を…

漱石が100年後を眺めたら/夏目漱石『余と万年筆』青空文庫

漱石と万年筆 夏目漱石『余と万年筆』。これは夏目漱石が自分の万年筆について書いた短いエッセイ。1912(明治45)年6月に発表したものなので、ゆうに100年前の文章である。漱石は、それまで使っていたペリカン製の万年筆と険悪な関係であったが、そのペリカ…

フランスの歴史の手引書として/柴田三千雄『フランス史10講』岩波新書

フランスの歴史をコンパクトにまとめた通史 わたしはフランスの歴史について、ほぼ何も知らない。まったく何も知らないと言っていいだろう。もちろん、学校ではひととおりの歴史は習ったので、その歴史の中に出てくるフランスの歴史的な出来事や人物は、「学…

たとえ敗北が運命付けられていたとしても/アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』新潮文庫

ヘミングウェイのたどり着いたひとつの頂点 アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』(福田恆存訳/新潮文庫)を久々に読んだ。短い物語だから、多くの人々が一度は手に取ったことのある作品だろう。『老人と海』のストーリーを簡単に説明すると、老いた漁…

鉛筆を使う楽しみが広がる鉛筆補助軸という道具

大人になって手に取った機能的な道具 当たり前のことだが、鉛筆は軸と芯を少しずつ削りながら使うので、やがて筆記が難しくなるほど軸が短くなる。そんなときに活躍するのが鉛筆補助軸だ。この鉛筆補助軸は軸が短くなってしまった鉛筆を差して使う。これによ…