読書ならではの一種のけだるい喜び〜ボルヘス『幻獣辞典』
【最近の読書から】
ホルヘ・ルイス・ボルヘス著 柳瀬尚紀訳 『幻獣辞典』河出文庫。
カバーの表紙にも幻獣たちの姿が所狭しとひしめく。
本文を読みながら、これは表紙に描かれたあの幻獣だろうかと思いを巡らせるだけでも楽しい。
「誰しも知るように、むだで横道にそれた知識には一種のけだるい喜びがある」。
序文の冒頭に掲げたこの一文のとおり、歴史とともに人間が生み出してきた想像力の産物たちの世界が、ある種の独特な恍惚に近い喜びをもたらす。そんな気分に浸ることのできる一冊。
一角獣、シルムグ、セイレーン、バハムート、ミノタウロス……。
本書には120もの幻獣たちが登場する。
思い出したのが、ドラえもんに出てきた未来の世界にある架空の生物たちの動物園。
そこは未来のテクノロジーが生み出した想像上の生物たちを動物園として見学できる施設だ。
21世紀冒頭に生きる我々には、22世紀に存在するという架空の生物たちを集めた動物園を訪れる機会など、おそらくはないだろう。
けれども、本書を開けば、22世紀ではなくとも、我々は幻獣たちの生き生きとした姿を目撃することができる。
一見何の役にも立ちそうにもない、想像力が生み出す知識だけがもたらすことのできる満足や喜びが、人間にはたしかにある。
スフィンクスやトロールといった幻獣たちの姿や生態を通して、人間の想像力は、こんなにも深くて豊かだということを再認識させられる。本書はそんな一冊だと言えよう。
以上はtwitterへの投稿を一部加筆修正したもの。
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