誤読と曲解の読書日記

読書の感想を書く日記です。あと、文具についても時々。

ボールペンの先端から針金のような細い金属が出てきました/無印良品 組み合わせが選べる3色ボールペン(廃盤品)

ボールペンの先端から針金のような細い金属が出てきました/無印良品 組み合わせが選べる3色ボールペン(廃盤品):目次

  • ボールペンの先端から針金のような細い金属が出てきました
  • 稀に起こる現象のようでした
  • 参考リンク

ボールペンの先端から針金のような細い金属が出てきました

わたしが普段使いしている無印良品のボールペンの先端から、細い針金のような金属が出てきました。
こういう現象は、長い間ボールペンを使っていて初めて遭遇したので、思わずtwitterにupしました。

なお、このボールペンは、無印良品の「組み合わせが選べる3色ボールペン」です。
この「組み合わせが選べる3色ボールペン」の軸に、赤、青、緑のリフィルを差し込んで使っているものです。このうちの青の軸の先端から、針金のような細い金属が出てきました。


すると、ある方から、これはボールペンの芯の中に入っている金属が出てきたものだと教えていただきました。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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「トランプ王国」はどこへ向かっていくのか/金成隆一『ルポ トランプ王国 もう一つのアメリアを行く』岩波新書

「トランプ王国」はどこへ向かっていくのか/金成隆一『ルポ トランプ王国 もう一つのアメリアを行く』岩波新書:目次

  • 陸続きの日本人たちとトランプ支持者たち
  • ミドルクラスから貧困層へ滑る落ちる不安
  • 単純だった世界は取り戻せない
  • 最貧困地域と人種差別
  • サンダース支持者たちと格差の解消
  • 「スキルギャップ」と「雇用のミスマッチ」
  • もっと「トランプ王国」の多様な姿や本質を
  • 参考リンク

陸続きの日本人たちとトランプ支持者たち

2016年のアメリカ合衆国大統領選挙では、共和党から立候補したドナルド・トランプ氏が事前のおおかたの予想を覆して当選した。トランプ氏の選挙戦中の言動には、さまざまな疑問符がつけられていた。人種差別、女性差別的な言動をはじめ、メキシコとの国境沿いに壁を建設するという訴えなど、彼の政策の実現可能性にも疑わしさが指摘されていた。けれども、最終的にトランプ氏がアメリカ大統領に選出されることになった。

本書では、なぜアメリカの人々がトランプ氏を支持したのか、特に、いわゆる「ラストベルト」に住む人々の生の声を拾い上げている。本書を読むと、トランプ氏はこの「ラストベルト」を中心とした地域に住む人々の声を拾い上げて、大統領の座を射止めたのだということがわかる。

2016年のアメリカ大統領選挙で特徴的なことは、前回の共和党候補が敗北して、今回トランプ氏が勝利した州が6つあり、そのうち5州が「ラストベルト」と呼ばれる地域であったという点が、本書では指摘されている。この「ラストベルト」とは、「従来型の製鉄業や製造業が栄え、ブルーカラー労働者たちがまっとうな給料を稼ぎ、分厚いミドルクラス(中流階級)を形成していたエリア」(本書pⅲ)であり、「重厚長大産業の集積地で「オールド・エコノミー」の現場」(本書pⅲ)である。

筆者はこの「ラストベルト」を歩き、主にトランプ氏の支持者たちに会って話を聞き続ける。筆者が話を聞きたいと告げると、トランプ氏支持者たちはみな、自分の話を聞いてほしいと訴え、自分の置かれた状況を語るのだ。ユーモアに包んだ語り、悲痛な語り、過去を懐かしむ語り、現状への怒りと将来への不安の語り。

本書に登場するトランプ氏の支持者たちは、みな気さくで親切でいい人ばかりだということに、わたしたちはすぐに気づく。そんなトランプの支持者の多くを、筆者は「明日の暮らしや子どもの将来を心配する、勤勉なアメリカ人」(本書pⅱ)と位置付ける。本書で描かれているトランプ支持者の姿は、わたしたち日本人の姿と重なるものも多いことに気づくのだ。本書を読むと、わたしたち日本人とトランプ支持者たちとは、実は「陸続き」だという発見がある。

本書の「はじめに」の締めくくりで、著者は訴える。「ラストベルトの人々の悩みは、日本の人々の悩みと陸続きに見えた。グローバル化する世界での、先進国のミドルクラスという意味で共通点がある。トランプ大統領を誕生させた支持者たちは、決して私たちに理解できない他人ではない」(本書pⅳ)と。わたしも同感だ。ここに描かれているものは、アメリカの主に「ラストベルト」の風景だが、それは現在の、あるいは将来の日本の風景でもあると言えるのかもしれない。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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嵐が来る前にいたはずの場所には、もう二度と戻ることができないことを知る物語/ジョン・ニコルズ(村上春樹訳)『卵を産めない郭公』新潮文庫(村上柴田翻訳堂)

嵐が来る前にいたはずの場所には、もう二度と戻ることができないことを知る物語/ジョン・ニコルズ村上春樹訳)『卵を産めない郭公』新潮文庫(村上柴田翻訳堂):目次

  • 嵐が来る前にいたはずの場所には、もう二度と戻ることができないことを知る物語
  • 孤独を抱えたジェリーとプーキー
  • ジェリーの変化が水面下で二人の関係をを変化させた
  • プーキーの自己変革への行きすぎた跳躍
  • 痛々しくて少し悲しい物語
  • 参考リンク

嵐が来る前にいたはずの場所には、もう二度と戻ることができないことを知る物語

ジョン・ニコルズ村上春樹訳)『卵を産めない郭公』新潮文庫(村上柴田翻訳堂)。

ジョン・ニコルズ『卵を産めない郭公』は、ひとまずは恋愛小説や青春小説と位置付けることができる。この物語を読みはじめると、わたしたちは主人公の青年ジェリー・ペインとともに強い嵐に巻き込まれてしまう。この物語を読んでいると終始、嵐による強い風に吹かれ、強い雨に打ち付けられているかのような感覚に陥る。

そして、この物語が終わったあと、嵐がやってくる前にいたはずのはじめの地点には、もう戻ることができないことにふと気づく。わたしたちがまわりを見回しても、もうはじめにいた場所とは違った風景が、わたしたちのまわりを取り囲んでいる。そんな見覚えのない風景の中で、わたしたちは、はじめにいた場所には永遠に戻れないことを知るのだ。

この物語で強く印象に残るのが、物語の語り手ジェリーの恋の相手となるプーキー・アダムズの壊れっぷりである。プーキーは物語のはじめから破綻したもの、壊れているものを抱えている。その破綻したものや破壊的なものが、切実にプーキーを突き動かして、ジェリーを強い嵐に巻き込んでいく。

この物語で描かれるのは、ふたりの大学生の(おそらくは人生初の)恋愛だが、この破綻したもの、破壊的なものが少しずつふたりを追い詰めてゆく過程をも描き出すのだ。
Storm


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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「夏の100冊」/『誤読と曲解の読書日記』2017年7月のまとめ

「夏の100冊」/『誤読と曲解の読書日記』2017年7月のまとめ:目次

  • 「夏の100冊」
  • おまけをとっておくこと
  • 『誤読と曲解の読書日記』今月のまとめ
  • 『誤読と曲解の映画日記』今月のまとめ
  • 管理人からのお知らせ:九州北部豪雨への義援金など

「夏の100冊」

夏休みといえば、毎年各出版社が「夏の100冊」的なキャンペーンを行いますね。わたしが中学生や高校生のときもそういったキャンペーンが行われていて、まだ知らぬ作者の本を手に取ったものでした。

最近は、古典文学などのラインナップが減り、エンタメ系や自己啓発系などの文庫も数多くラインナップされるようになりました。時代の流れでしょうけど、夏休みだからこそ、普段は読めない古典文学を読んでほしいなあと小声で主張したいところです。

もちろん、「夏の100冊」的なものに入らなくても、エンタメ系の作品には素晴らしい作品、古典的な作品もたくさんあって、それも楽しんでほしいなあと小声で主張したいところです(2回目)。ただ、「夏の100冊」的なものに入っているエンタメ系を見てみると、最近の売れ筋商品も多く入っている気がしないわけでもないなあと、小声で主張したいところです(3回目)。

まあ、紙の本を読む人が減っているのだろうとは思うので、できるだけ手に取ってほしいと出版社が考える、(古典文学と比べれば圧倒的に)読みやすい本を並べるのは、わからなくもないんですが。

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ひょっとすると、それは明日の日本の姿なのかもしれない/水島治郎『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』中公新書

ひょっとすると、それは明日の日本の姿なのかもしれない/水島治郎『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』中公新書:目次

  • ポリュリズムについて考えるための第一歩
  • ポピュリズムの持つ「解放と抑圧」
  • 「リベラル」と「デモクラシー」を利用するポピュリズム
  • ひょっとすると、それは明日の日本の姿なのかもしれない
  • 参考リンク

ポリュリズムについて考えるための第一歩

水島治郎『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』中公新書

本書は、現在、世界的に広がりつつあるポピュリズムについて俯瞰的に眺め、ポピュリズムとデモクラシーの関係や今後の行方について考えるための一冊だと言える。本書の帯に「世界を揺さぶる「熱狂」の正体」とあるが、本書はまさにポピュリズムなる「熱狂」を、「一方的に断罪せず、その本質を見極めよ」(本書の帯より)と訴える。本書は、ポリュリズムについて考えるための第一歩として手に取れる一冊だ。

本書の目的は「この現代世界で最も顕著な政治現象であるポピュリズムを正面から取り上げ、解明を試みること」と位置付け、「特に、デモクラシーが根を下ろしたはずのヨーロッパ」の「先進各国において、ポピュリズム政党が猛威を振るい」、「国の基本的な方向をも左右しつつあることを、どう考えればいいのか」との問題意識を踏まえながら、現代のポピュリズムの姿を明らかにしていく(この項の「」内はいずれも本書pⅲ)。

2016年のイギリスのEU離脱をめぐる国民投票アメリカ大統領選挙、日本でも大阪維新の会の存在や東京の都民ファーストの会の躍進など、ポピュリズムに関連した話題を聞かない日はないと言ってもいいほどだ。しかし、ポピュリズムなるものの実態となると知っているようで知らないことも多い。

本書を読み進めていくと、うすら寒いものさえ感じる。本書で取り上げる事例は、多くがヨーロッパ諸国におけるポピュリズムであるが、西洋近代的価値観を共有する日本でもまた、似たような事例をいくつも思い浮かべてしまうからだ。

ここに描かれたのは、主に西洋近代的価値観を持つヨーロッパ諸国のポピュリズムの姿だが、これが明日の日本の姿なのかもしれないという思いは拭きれない。だからこそ、ポピュリズムとの向き合い方を考える上でも、さまざまな示唆に富む一冊でもある。
Donald Trump's Inauguration


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