誤読と曲解の読書日記

読書の感想を書く日記です。あと、文具についても時々。

ジャガイモが身近にある幸福/伊藤章治『ジャガイモの世界史 歴史を動かした「貧者のパン」』中公新書

ジャガイモが身近にある幸福/伊藤章治『ジャガイモの世界史 歴史を動かした「貧者のパン」』中公新書:目次

  • 「貧者のパン」として世界を動かしたジャガイモ
  • ジャガイモがあぶりだした社会構造
  • ドイツの市民農園
  • 先人たちの苦闘の歴史
  • ジャガイモが普段の生活に寄り添うことの幸せ
  • 参考リンク

「貧者のパン」として世界を動かしたジャガイモ

本書の「はじめに」の部分で、筆者はジャガイモを次のように紹介する。16世紀の南米ペルーから全世界に広がったジャガイモは、寒冷地や痩せた土地でも育つたくましさ、高い栄養価を持つと。同時にまた、ジャガイモは歴史の曲がり角や裏舞台で「隠れた主役」「影の実力者」として大衆に寄り添い、世界を救ってきた、とも。

本書は、人々がどのように食生活の中へとジャガイモを取り入れ、ジャガイモが世界的な出来事に、どのように関わってたのかを眺めてゆく。そこで明らかになるのは、「貧者のパン」として、凶作や飢饉、戦争が生み出した苦しむ人々に寄り添い、世界を動かしたジャガイモの姿だ。

わたしたちにとって、身近な存在であるジャガイモ。世界と日本の歴史を眺めることで、今日、ジャガイモが身近であるのも先人たちの苦闘の連続があったためだということを、本書は明らかにする。本書を読めば、よりいっそうジャガイモを愛おしく感じられるようになるだろう。

本書は、終章まで入れると全九章仕立ての構成になっている。第一章と第八章は日本とジャガイモの関わりを眺める。第二章と第三章では、南米ペルーに飛び、ジャガイモの発祥の地を探し求め、インカ帝国を支えたジャガイモと、南米からヨーロッパに伝播する様子を見てゆく。第四章から第七章までは、ヨーロッパに伝わった以降のジャガイモと世界の歴史との関わりをみてゆく。

また本書は最後に、将来的な食料危機への警鐘も鳴らす。ジャガイモが「貧者のパン」として歴史に登場するときは「異常な時代」であり、だからこそ、将来的な食糧危機に備え、ジャガイモだけに頼らない環境対策や農業対策が必要だと訴える。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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新書用のブックカバーを作りました/無印良品 自分で折るブックカバー

新書用のブックカバーを作りました/無印良品 自分で折るブックカバー:目次

  • 「自分で折るブックカバー」
  • さっそく作ってみる
  • 「自分で折るブックカバー」完成
  • 参考リンク

「自分で折るブックカバー」

昨日、無印良品に出かけたら「自分で折るブックカバー」というものを見つけました。

ちょうど、新書の大きさのブックカバーを探していたところだったので、「そういえば、無印良品といえば、ジーンズラベル素材のブックカバーがあったぞ」と思い出して、それらしき棚へ行ったところ、この「自分で折るブックカバー」を見つけたのです。

もちろん、新書サイズのジーンズラベル素材のブックカバーも置いてあったのですが、こちらの方を試してみようということにしました。


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誰かが誰かを思いやり、時に心を傷ませながらも、信頼する誰かのために動き回る/E・ケストナー(池田香代子訳)『飛ぶ教室』岩波少年文庫

誰かが誰かを思いやり、時に心を傷ませながらも、信頼する誰かのために動き回る/E・ケストナー池田香代子訳)『飛ぶ教室岩波少年文庫:目次

  • ギムナジウムの生徒たちに、かつて子どもだったわたしたちを重ねる
  • マルティンの抱えているもの
  • 孤独のままに生きるより、誰かのために生きた方がいい
  • 誰かが誰かを思いやり、時に心を傷ませながらも、信頼する誰かのために動き回る
  • この物語について
  • 参考リンク

ギムナジウムの生徒たちに、かつて子どもだったわたしたちを重ねる

エーリヒ・ケストナー池田香代子訳)『飛ぶ教室岩波少年文庫

エーリヒ・ケストナーの『飛ぶ教室』は、ドイツのギムナジウムを舞台にした児童文学。クリスマスの前後で繰り広げられるギムナジウムの生徒たちの成長を描く物語だ。本書のタイトルにもなっている「飛ぶ教室」とは、クリスマスに上演されるギムナジウムの生徒たちによる演劇のタイトルでもある。

飛ぶ教室』は児童文学なので、対象となる読者の年齢は10代前半あたりになるだろう。実際に、この岩波少年文庫版のカバーの裏表紙には、読者の対象として「小学4・5年以上」とある。しかし、大人になってしまったわたしたち、かつて子どもだったわたしたちが読み返しても、心を揺さぶられる。それはギムナジウムの生徒たちに、かつて子どもだったわたしたちを重ね、愛おしさと切なさを感じるからだ。

※この物語の舞台となっている「ギムナジウム」とは、10歳から18歳くらいまでの男の子たちが入る寄宿学校のこと。子どもたちは、この寄宿学校で仲間たちと寝食をともにし、勉学に励むようだ。

飛ぶ教室』を通じて描かれるのは、「勇気ある者と臆病な者の、かしこい者とおろかな者の物語になる予定だ」(本書p26)と、「まえがき」にある作者ケストナーの語りが予告してある。これはその直前の部分で作者ケストナーが語った、「かしこさをともなわない勇気」と「勇気をともなわないかしこさ」についての話とつながっているのだろう。

その一節は次のように語られている。「かしこさをともなわない勇気は乱暴でしかないし、勇気をともなわないかしこさは屁のようなものなんだよ! 世界の歴史には、かしこくない人びとが勇気をもち、かしこい人びとが臆病だった時代がいくらでもあった。これは正しいことではなかった」(本書p25)。

この物語の登場人物たちの多くは、臆病さ、愚かさ、かしこさをともなわない勇気、勇気をともなわないかしこさを抱えている。それらは登場人物たちの欠点であり、弱点だ。『飛ぶ教室』の登場人物たちは、物語を通じて、自らが抱える欠点や弱点を克服し、成長してゆく。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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理想的な自己紹介を考える/今週のお題:自己紹介

理想的な自己紹介/今週のお題「自己紹介」:目次

  • 自己紹介は忘れ去られてしまうもの
  • 印象に残った自己紹介
  • 理想的な自己紹介のポイント
  • 改めて自己紹介

※この記事は、はてなブログの「今週のお題」に参加するものです。

自己紹介は忘れ去られてしまうもの

春は自己紹介の季節ですね。学校や職場のあちこちで自己紹介が繰り広げられる季節です。そこでひとつ気づいたのが、自分が自己紹介をする機会よりも、他の誰かの自己紹介を聞く機会の方が圧倒的に多い。

しかしながら、他の誰かの自己紹介がわたしたちの印象に残るものであったかと聞かれると、必ずしもそんなことはないわけです。むしろ、他の誰かの自己紹介が、そのあともずっと印象に残るなんてことはどれくらいあるだろうか。そんな疑問をふと思ったわけです。

たとえば、学校や職場で親しくなったあの人は、最初にどんな自己紹介をしてたっけ、なんてわざわざ思い返すこともない。わたしたちにとって自己紹介はありふれた光景でもありますが、そのわりには実は他の誰かの自己紹介が深く印象に残るなんてこともないわけです。多くの人々にとって、そしてわたしにとって、誰かの自己紹介の言葉は、あっという間に忘却の彼方に消えてしまうものなのでしょう。

そのことに気づいたあと、いざ自分が人前で自己紹介をするときも、わりと自己紹介を気楽に考えることができるようになりました。多くの人々は自己紹介をするとなると、ある程度緊張するものなのかもしれませんが、「自分以外の他の誰かの自己紹介の言葉など、人々は簡単に忘れてしまう」と考えると気が楽になり、わりと緊張感も薄れます。

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なぜか栞をよく失くすので、手作りしてみました

なぜか栞をよく失くすので、手作りしてみました:目次

  • なぜか栞をよく失くす
  • 栞を手作りすることに

なぜか栞をよく失くす

ここでの「栞」とは、自分で買った市販の栞。書店でもらったり、はじめから本に挟まっている出版社の栞ではない。
いつも失くすのは、せっかく買った市販の栞の方で、書店や出版社のタダでもらえる栞の方は、失くすことがあまりない。なぜなのだろう。

そこで、twitterで見かけた手作りの栞の作り方にならって、自分でも手作り栞を作ってみた。
tweet本文にあるように、封筒の角を利用して作る、三角帽子のような形をした栞。
しかし、これもいつのまにか、わたしの元から消え去っていた。

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