誤読と曲解の読書日記

読書の感想を書く日記です。あと、文具についても時々。

真っ黒に汚れた古い消しゴム

真っ黒に汚れた古い消しゴム

わたしが普段使っているペンケースの中に、古い消しゴムがある。

消しゴムを包む紙のスリーブもとっくの昔に外れてしまった、全体が真っ黒に汚れた消しゴムだ。

最初に買ったときからはずいぶん時間が経過したため、いくぶん硬くなってしまったし、そのせいなのか文字もわりと消しにくい。しかもかなり汚れているので、他の人から見れば、もう捨ててしまってもいいものなんじゃないかと思われるかもしれない。

この消しゴムは、センター試験の前日に、帰り道のコンビニで買ったもので、その時はドラえもんが印刷された紙スリーブに包まれていたものだ。

その、まだ新品だった消しゴムとともにセンター試験に臨み、なんとか無事に大学に入ることができた。以来、ずっとわたしのペンケース(いくつか変わったが)の中にあり、今も少しずつ使っている。

その存在を感じるだけで安心できる類のもの

今はトンボのモノ消しゴムも一緒にペンケースで同居しているので、使用頻度はそれよりも低い(モノ消しゴムの方が消えやすいので)。

けれども、この古い消しゴムはいつもペンケースの中から顔をのぞかせ、あるいは机の片隅に転がり、その存在を常に感じる場所にいる。普段はあまり使わなくても、その存在を感じるだけで安心できる類のものというのが、世の中には存在することもあるのだ。

たとえ使用頻度が低くなっても、センター試験から大学の授業やレポート作成、社会人になってからも様々な検定や資格試験をともにし、今もこうして文章を書いている傍らで、いつも静かに出番を待っている。

ペンケースの中の筆記具、たとえば鉛筆やボールペンは時間の経過とともに入れ替わってゆくし、わたし自身もそれとともにそれなりに年齢を重ねてきた。その古い消しゴムはまるで古木が街の変遷を静かに見守り続けているように、静かにペンケースの中に存在している。

消しゴムは文字を消すという役割を果たすたびに、自らもまたその分だけ小さくなっていく。
この古い消しゴムがもっともっと小さくなり、指でつかめないサイズとなり、文字を消すという役割を果たせなくなる時まで、この消しゴムを使い続けることができればいいのだがと思っている。


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