我が身を削る鉛筆
木という天然物を使う文房具
手書きの際に使用頻度が高いのは鉛筆だ。『手書き』の記事でも少し書いたが、そもそもは昔使っていた鉛筆を見つけ、捨てるのも忍びないので、日常の中で使っていこうと思い立ったことが、現在も鉛筆をかなりの頻度で使うきっかけになった。
ちょっとしたメモや記録、あるいは日記に至るまで鉛筆を使っているが、使い続けるうちに鉛筆という筆記具自体に興味を持ち、好きになっていった。
鉛筆が好きな理由はいくつか挙げることができるが、大きな理由のひとつとして、木という天然物を使っているということが挙げられるだろう。たとえば鉛筆を削る時、木の香りがほのかに周囲に香る。このような文房具は他に見あたらない。
文章などを書き綴っている時、鉛筆を削るのは小休止になるが、その時に漂う木の香りは、何とも言えない心地よさを感じる。
その身を削りながら
鉛筆といえば、三菱とトンボが日本の二大メーカーがあり、その品質も世界最高水準といってよい。
日本の場合、鉛筆に関しては業界の取り決めでJISマークをつけていない。JISマークは工業製品の一定水準の品質を保証するものだが、それを業界であえて外したということは、それだけ高い品質のものを製造しているということでもある。
三菱やトンボに限らず、中小のメーカーもまた、高品質な鉛筆を製造しているのだ。
そういった中小メーカーのひとつである北星鉛筆のホームページには、以下のようなことが書いてある(以下は、HPからの抜粋)。
「鉛筆は我が身を削らないと字が書けません。いくら立派な芯を持っていても削らなければ絵が描けないのです。
大いに我が身を削り、努力し、そして大きな夢を描き、実現して下さい。」
日本の鉛筆製造に関わる人が、このような哲学を持っているのだ。鉛筆はその身を削りながら短くなっていく。そのぶんだけ、鉛筆が短くなる前の自分よりも、少しでも進歩し、成長していけるといい。使いながら、そんな思いを抱くことのできる文房具だと言えるのだ。鉛筆は。
このような奥深さを持つ鉛筆は、そう簡単に手放せない。