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誤読と曲解の読書日記

読書の感想を書く日記です。あと、文具についても時々。

物足りなさと過剰さが同居する一冊/十川信介著『夏目漱石』岩波新書

物足りなさと過剰さが同居する一冊/十川信介著『夏目漱石岩波新書:目次

評伝ではあるが…...

十川信介著『夏目漱石岩波新書

本書は、タイトルどおり、夏目漱石の生涯を描く評伝である。漱石の出生から亡くなるまでの生涯を時系列に追っていく。時系列であるがゆえに、漱石個人の生涯の歩みと、そのときどきの漱石の文学作品の解説が織り交ぜられながら語られてゆく。

ただ、漱石作品の解説の部分が細かすぎるのが気になった。夏目漱石の評伝を描く上で、個々の文学作品の解説を切り離すことはできないのだろうが、微に入り細に入りすぎた印象。すでに作品の内容を知っている人には冗長であるし、これからその作品を読んでみようという人にとってはネタバレとなっている。

むしろ、漱石の生涯と作品の解説が知りたいのなら、各文庫から出ている漱石の作品とその巻末にある解説、さらにはそれに加えて、岩波文庫から出ている書簡集など一連の文学先品以外のものをまとめた本を読む方を、個人的にはおすすめしたい。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

作品と生涯の関係

もちろん、作家個人の生涯の歩みや作家を取り巻く個人的社会的状況と、そのときどきの小説に描かれた問題意識はリンクしている場合も多い。

本書が夏目漱石の生涯を描く評伝であるのなら、個々の作品の解説はもう少しコンパクトにまとめ、むしろ前後の作品との関連づけやその作品が及ぼした個人的社会的影響、あるいは他の作家の作品との関連や影響などを、もっと盛り込んでも良かっただろう。

また、いわゆる「前期三部作」や「後期三部作」などに通底する構図や問題意識、登場人物の意識や言動、あるいはそれらの変化の過程など、個々の作品をまたいだ俯瞰的な解説が読みたかったのが素直な感想である。

漱石の生涯を描く部分と小説などの作品の詳細な解説は、それぞれ章を別立てにしても良かっただろう。たとえば、中公新書から出た『シェイクスピア』のように、前半は夏目漱石の生涯、後半は夏目漱石の作品の解説というふうに描くこともできたはずだ。漱石の生涯を個人的な出来事を中心として時系列に並べ、その中でこのような作品を生み出したと解説する章と、個々の文学作品や複数の作品群を眺めての解説をする章というふうに、分けた方が良かったようにも思える。

本書は夏目漱石の評伝として、その生涯を追ったものであり、時系列に漱石の生涯とそのときどきの文学作品の解説を概観することができるが、全体として少し物足りなさと過剰さが同居する一冊になっていると言わざるを得ない。

参考リンク

1)岩波新書/『夏目漱石
https://www.iwanami.co.jp/book/b266482.html

2)ブクログ/『夏目漱石
booklog.jp

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『誤読と曲解の読書日記』管理人:のび
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