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誤読と曲解の読書日記

読書の感想を書く日記です。あと、文具についても時々。

知恵と教訓を読みなおし、できる限りの手を差し伸べよう/磯田道史『天災から日本史を読み直す』中公新書

読書

磯田道史著『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災』中公新書

日本は昔から、地震津波・噴火・台風・土砂災害といった自然災害=《天災》に数多く見舞われてきた。いにしえの人々は、さまざまな《天災》に遭い、被災しながらも、後世の人々に警鐘を鳴らすために伝承や記録を残してきた。

本書は、それらの史料を”読みなおす”ことで、《天災》から生命を守るための先人の知恵を引き出そうと試みる。後世を生きる我々へ「生きのびてくれ」と伝える、いにしえの人々の叫びが詰まった一冊。

もともとは朝日新聞の土曜版の連載をもとにした一冊なので、文章は平易で読み易い。それに歴史上の天災の史料だけを扱うのではなく、著者自身の母親が遭遇した徳島の津波(昭和南海地震)や、岩手県大船渡小学校の校長先生が東日本大震災で遭遇した津波からの避難の体験談なども収められている。

過去の資料や災害体験者の証言から、本書は災害から生きのびるための知恵や教訓を要所要所に散りばめている。その知恵や教訓はひとつひとつが具体的で、実際にどのように行動すればいいのかわかりやすいので、本書は大人だけではなく、これからの社会を担っていく中高生にもお勧めしたい一冊だ。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

できる限りの手を差し伸べることも大事

イタリアの歴史哲学者ベネデット・クローチェは17歳の時にイスキア地震(1883年に発生。犠牲者は2300人とも3100人とも言われる)に遭遇、家族とともにがれきに埋もれた。クローチェと兄は助け出されたが、両親と妹は亡くなり、孤児となった。

父親のいとこの家に引き取られたクローチェは、深刻な「震災うつ」に陥ったが、苦しむのは今だけで永久には続かぬと図書館に通い始める。そして、引き取られた先の父親のいとこの家で哲学者ラブリオーラと出会い、哲学と歴史の研究に没頭し、やがて世界的な歴史哲学者となる。

戦国大名でのちの初代土佐藩主となる山内一豊は家族とともに1586年の天正地震に遭遇した。一豊がいた近江の長浜城地震で倒壊、唯一の娘を地震で亡くしてしまう。長浜城下も被災し、武士町人が焼け出されていた。そんな被災し混乱した城下でひとりの捨て子を一豊の妻が見つける。

一豊は捨て子を引き取り、養子として育て始める。この孤児は10歳で京都の寺に入り、学問を始める。その後、湘南宗化という高名な学問僧となり、土佐藩を土佐南学で知られる学問藩に育てる。また大学者・山崎闇斎を育て、山崎は会津藩主・保科正之に仕え、会津藩の学問レベルを引き上げた。

自然災害によって建物や町だけではなく、人命も失われてしまうのは避けられないことなのかもしれない。けれども、その後を生き延びた人々に優しい手を差し伸べれば、社会は全体として発展していく。本書の冒頭で紹介されているクローチェや山内一豊の例は、そんなことを示している。


日本は自然災害に遭遇し続けてきた歴史がある。いままさに熊本地震という震災が発生している。これからも、地震津波、噴火や台風、土砂災害が起こり続けていくだろう。いま現在何が起こり、どんな困難に遭遇しているのか、そういたことを記録していくことも、後世の人々のために必要ではないか。

そしてまた、いま困難に直面している人々にできる限りの手を差し伸べることも、これからの社会の維持・発展のために必要ではないか。本書を読みながら、そんなことを考えた。

被災地の方々が、いち早く穏やかな日常を早く取り戻せることを祈る。

参考

1)中公新書/『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災』
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2014/11/102295.html


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