誤読と曲解の読書日記

読書の感想を書く日記です。あと、文具についても時々。

柔らかく静かな存在の朱藍鉛筆

朱藍鉛筆は、どちらかと言えばマイナーな文房具に分類されるかもしれない。

いちおう解説すると、鉛筆の軸の片方に朱色の芯、もう片方に藍色の芯が通っていて、両端を削ってそれぞれ朱色と藍色の芯を使う、というもの。

小中高校と授業では使った覚えはなく、過去のどの時点で何に使ったのか記憶はない。
大掃除をしたときに使いかけのまましまわれていた鉛筆とともに出てきたので、これも使ってみようと思い立ったのが、この朱藍鉛筆を使うようになったきっかけである。

今使っているのは三菱鉛筆製の朱藍鉛筆。
「赤青鉛筆」ではなくあくまでも「朱藍鉛筆」である。

というのも、色名表示が「VERMILION」と「PRUSIAN BLUE」とあり、紙に書いた時の色合いも、まさに朱色と藍色の柔らかい色合いだからだろう。鮮やかな赤と青ではなく、あくまでも柔らかい朱色と藍色

この色合いを、わたしはとても気に入っている。

この柔らかな色合いの雰囲気は、ボールペンやサインペン、あるいは万年筆ではとても出すことのできない風合いのもの。


朱藍鉛筆は、手書きの日記や記録、文章の整理や構成を考えるとき、誤字脱字のチェック、傍線や囲み線を引くなどの作業の時に使っている。

たとえば読書の時のようにペンを使って傍線や囲み線を引くと、一分の隙もなくインクが引かれ、時にはそこにある文字よりも存在を強く主張するような印象を受ける。これが手書きの鉛筆の時など、脇役のはずのペンで引いた傍線や囲み線が、その存在を強く印象づけてしまう要にさえ感じる(まさにそのためにペンを使っているとも言えるのだが)。

けれども朱藍鉛筆で文字を囲んだり、傍線を引いたりしたときは、傍線や囲み線が過度に存在を主張せず、静かに文字のそばに寄り添っているような印象を受ける。

つまりは朱色や藍色が強く主張しすぎないところが気に入っているのだ。

ところで朱藍鉛筆は鉛筆なので、真の先端が丸くなれば削らなければならない。しかも朱色と藍色の両端を削るから、普通の鉛筆と比べれば削る手間が二倍もかかってしまう。

しかしそれは朱藍鉛筆を使った後の、ささやかな達成感とともにある作業だ。筆記などの作業をともにした仲間へのねぎらいをかけ、また次もともにがんばろうという意気込みを確認する、ある意味では充実した作業でもある。それもまた気に入った楽しい時間だ。

朱藍鉛筆はこれからも手書きをする際の、鉛筆や消しゴムとともに欠かせない存在であり続けるだろう。


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